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ドイツからのご報告
山本でございます。皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
遅くなりましたが、ドイツで食に関する興味深い施設を訪れましたので、
ぜひ皆様にご報告いたしたく存じます。
事の起こりは、ベルリンに住んでいた方から偶然、Unsicht-Barというレストランを教えていただいたことでした。
unsichtbarとは、ドイツ語で「見えない」という意味です。つまり、真っ暗闇のレストランなのですね。
暗闇で――すなわち五感のうち視覚が遮断された状態で――食事をする、それは一体どんな経験なのか。非常に興味を持ち、行ってみたいと思いました。
しかしUnsicht-Barはただおもしろおかしい経験を提供するだけの場ではありません。なぜならUnsicht-Barは、視覚障害者の雇用機会を増やすという目的のためにつくられたレストランでもあるからです。
見えない、という状態は、私たちの通常の生活では非常に不便な状態であり、見るという能力の欠如と捉えられてしまうのが普通かもしれません。
しかしこのレストランのなかでは、不自由な状態を強いられるのは逆に私たちの方であり、私たちは視覚障害者の方の認識能力に頼って、食事をすることになるのです。
私がそこに就職しようとしても、とてもつとまりませんが、視覚障害者の方にとっては、そこはすぐれた能力を発揮できる場になるのです。そのような場の生成を、私は食と倫理が結びつく場の生成として強く意識しました。そしてそうしたUnsicht-Barのコンセプトに対して、感動を覚えずにはいられなかったのでした。
私たちの担当をしてくださる視覚障害者の方の方に手を置き、みんなで電車ごっこのようにして中に入りました。中は、本当に真の闇で、全く何も見えません。
(一緒に行っていただいた先生が、あまりの暗さにややパニックを起こしたほどでした。)
闇がこれほどまでに人を不安にさせるものか、と思いました。
私たちは、饒舌になり、お互いに触って存在を確認しあいました。
「言葉は光」という文言が胸に迫ってきました。
食事は、Ueberraschungsmenue(びっくりメニュー)にしたので、何が出てくるのかわかりません。料理が来てからは、まず右手のナイフと左手のフォークの動きが合わないし、そもそも皿がどこにあるのかわからないし、大変でしたが、慣れると位置関係がわかってきて、「お皿の5時の方向に鶏肉があるよ」などと話せるようになってきました。
とまあ、このようなわけで、食事をしてきました。
とにかく、かつてない経験であるし、異様に互いの絆が深まるし、皆大興奮でお店を後にしました。
この店では、食べるということの本質について考えさせられましたし、
また先程も言ったように食と倫理との関係という観点からも、視覚障害のある方が本当に生き生きと働いていらっしゃる姿を見ることができて、大変有意義でした。
みなさんも機会があればぜひ、足を運ばれることをおすすめいたします。
Unsicht-Bar サイト(ドイツ語) http://www.unsicht-bar-berlin.de/