将軍昼食企画*第1次研究成果(4)

黒田さんのご報告です。
こちらも、大変詳しく、かつわかりやすい記述で参考になります。

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〈担当〉一重小重 干ししょうが、塩山椒、小梅干し

① 干ししょうが
しょうがは、主に魚の付け合わせとして一年中出されていたようだ。魚の付け合わせとしては、他におろし大根、大根しらが、栗などがある。また、しょうがが薬用ではなく、食用として広まったのは江戸時代であるということだ。
② 塩山椒
あまり資料がなく、深く調べることが出来ませんでした。漬け物の一種であるそうです。
③ 小梅干し
小梅とは、梅の一種であり、白花で多くの実を結ぶ。

江戸時代、梅干しは、食中り、水中りの特効薬、「腹下しの薬」として広まっていた。当時は、冷蔵庫や防腐剤がない為、食べ物の腐敗、食中毒が多かった。また、水道が完備されているのは一部であり、ほとんどは井戸水、谷川の水を飲んでいたため、水中りによる体調不良も多かった。そのため、梅干しは特効薬として活躍していた。江戸時代の疫病流行時には、梅干しの酸による殺菌力で病を防ぐことができるということで、多くの人が買いに走り、価格の高騰を招いたほどである。梅干しを食べると疫病などの中毒を防げること、江戸時代には朱色が厄除けの色とされていたことから、「朝の梅干しは一日の難逃れ」ということわざが生まれた。元旦に食べる梅干しは、「一年の難逃れ」、「一年の福を招く」と言われているのもこのためである。
 梅干しは食用としても、あらゆる料理に使われていた。例えば、江戸初期から庶民にも食べられるようになったうどんの薬味である。これは、うどんを食べると肝臓が開き、その肝臓を元に戻す役割を梅が担うためであるそうだ。他には、魚の生臭さを消す役目、魚を美味しく食べる脇役として梅干しが使われていた。弁当での梅干しの役割は、道中、仕事で汗をかいた体の塩分補給、弁当の腐敗防止である。江戸時代には、「火事と喧嘩」と言われるほど火事が非常に多かった。そのため、梅干しは、すぐに食べられ、保存がきくということで、災害時の援助食糧として、商家や寺院に蓄えられていた。また、戦時携行食としても活躍していた。
 吉宗にまつわるエピソードとしては、軍用に梅干しの保存を奨励した、将軍となって江戸へ上る際、梅干しを土産としてもっていったことが挙げられる。
以上のように、江戸時代には、梅干しは、身分関係なく、庶民、武士の食生活に深く、広く浸透していたことが伺える。また、単なる食用としてだけでなく、水中り、食中りの特効薬、援助食糧、戦時携行食などのように、梅干しはあらゆる役目を果たす食材であったと言える。最後に、江戸時代の梅と現在の梅との違いである。先に述べたように、江戸時代の梅は、長期保存のきく保存食であった。しかし、現在市販で売っている梅干しというのは、賞味期限のある言わば「生もの」である。これは、江戸時代には塩のみで漬けていた梅干しが、現代の嗜好に合わせてはちみつ、砂糖、果糖など多種の糖類が使われているためである。梅干しという名自体は、江戸時代から変わらないが、江戸時代と現在の梅干しは似て非なるものだということだ。塩のみの梅干しを再現すると面白いのではないかと思った。
 
―江戸時代の漬け物―
江戸時代の香の物とは、主要な副食であり、重要な保存食であった。漬け物のない食卓は考えられなかったようだ。お客さんが来ると、その家の手作りである香の物を出すのが習慣であったことからも香の物の重要性が伺える。また、多様な香の物が誕生したのは、江戸時代からである。

参考文献
有岡利幸『ものと人間の文化史 99・梅干』(2001年、法政大学出版局)
小川敏男『漬け物と日本人』(1996年、日本放送出版協会)
高橋幹夫『江戸あじわい図譜』(1995年、青蛙房)

参考URL
梅明日香 http://www.umeasuka.co.jp/index.htm (2010/01/10最終参照)
梅干し館 http://www.umeta.co.jp/umebosikan/umebosikan.html(2010/01/10最終参照)
永谷園生姜部 http://www.shouga-bu.com/ (2010/01/10最終参照)
 長野電波技術研究所 http://www.i-apple.jp/ (2010/1/10最終参照)

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