第1回食の文化研究会レポート(その2:渡辺先生)

次に、渡辺先生の基調報告:「カトリック王国としてのスペインの食」についてレポートいたします。

渡辺先生のお話は、ご専門でいらっしゃるスペインの食のアイデンティティについてです。普段多くの人にとってあまりなじみのないスペインの食を歴史・文化・風土の文脈からひもとき、写真と共にわかりやすく説明してくださいました。
渡辺先生は、
1.風土と気候
2.民族的変遷にもとづく違い(アラブ民族の影響等)
3.宗教(イスラム教、ユダヤ教、カトリック)

の3つの要素を挙げられ、これらの複合的な関係から、スペインの各地方の食文化の特徴が生まれていることを指摘されました。下に箇条書きにしてみます。

・バレンシア地方―米[←アラブ民族]
・北:バスク地方―オリーブの栽培に適さない地方/しかしオリーブオイルを使用した料理法が多く存在
・南:アンダルシア地方―魚をすぐに揚げる
・中央:カスティージャ・ラ・マンチャ地方―羊のチーズ
——————–
・アンチョビ[←ローマ帝国のガルム]
・ハチミツ、佐藤[←アラブ民族]
・魚料理[←アラゴン王国]
・金曜日に豆料理か魚料理を食べる[←カトリック]
・豚[←カトリック(逆説的)]
・豆の煮込みと塩だら[←カトリック]

私がいちばんおもしろいと思ったのは、豚のお話です。カトリックがユダヤ教とイスラム教を駆逐したときに、ユダヤ教とイスラム教では豚を食べることが禁止されていたために、豚を食べることがカトリック信徒の証になった。つまり豚は踏み絵のような存在であった。この事実が、今のスペイン人の豚料理好きの根っこにあるのだそうです。

15世紀以降、レコンキスタによってカトリック王国としてのスペインの食文化が形成されていくこと、またアメリカ大陸の発見により、16世紀以降にはアメリカからもたらされる食材もスペインの食文化に大きな影響を与えました。

その後スペインの食文化はフランコの独裁政権まで、事実上の鎖国状態に陥ることになりますが、現代ではフェラン・アドリア(エル・ブジ)の出現、日本を含む外国文化への関心、ファーストフードの影響などによって、スペインの食のありかたも多様になっているとのことです。

(山本 恵子)

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